歯槽堤の欠損に対して

歯槽堤の欠損に対して

歯槽堤の欠損に対して

当院では日本歯周病学会認定研修施設として常勤歯科医師、衛生士の歯周病に関する専門的な知識の習得を目標に1週間に1度、朝に抄読会を行なっています。
抄読会を通して歯周病に関する文献、論文を読み合わせをすることでスタッフ間で歯周病についての共通の知識をもち、医院として患者様により専門的で高度な歯周病治療を提供していきたいと考えています。
今後は抄読会の内容について、院内ホームページで抄読会の内容の一部を掲載させて頂きます。
皆様の歯周病に関する知識の向上に役立てていただければと思います。

本日は歯槽堤の欠損、つまり歯を抜いた後あるいは何らかの原因で歯を失った後どのようなアプローチを選択したらいいかについて勉強しました。その内容について以下に記します。

Vol 3歯槽堤の欠損に対して

歯槽堤の欠損に対しての解決法には金属床の部分床義歯や固定式のコーピングや可撤式のブリッジがあります。
まず歯槽堤がどのように欠損しているか分類する必要があります。その際に評価するところは歯槽堤の幅、歯槽堤の高さ、歯槽堤の幅と高さの複合型か分類します。歯槽堤増大の際に外科手術では不足する場合は、歯槽堤(軟組織)の外科的増大と補綴的なアプローチの両方を組み合わせるプランも検討していきます。

例えば前歯部の歯槽堤の欠損の修復には様々なテクニックがあります。
・歯槽堤の欠損をアクリルレジンで満たす可撤式の装置
・金属床の局部義歯で歯を補綴する、またはコーピングブリッジで補綴する
・軟組織を増大しておいて、その後に固定式のブリッジによって歯を補綴する
・骨の増大とデンタルインプラント
どの方法を選択するかは、歯槽堤欠損の程度、設計した最終補綴物、予後、患者の希望、経済的な可能性および患者の協力度によって決定します。

歯槽堤の増大後の処置として今回はインプラント療法に焦点を当ててみます。
健常者において、15年後のインプラントの成功率は99%と報告されています(Lindquistら.1996)。しかし全身疾患を伴う患者や高度な歯周炎を患う患者では成功率がかなり低いです。そのため局所のリスクファクター(口腔清掃状態、協力度など)と全身的なリスクファクター(喫煙、糖尿病、骨粗鬆症、血液疾患)について十分検討し、診断する必要があります。またCT撮影をすることで、複雑な症例やハイリスクの症例に対し歯槽堤の形、構造、厚さなどの情報の他、上顎洞、下顎管、緻密骨層の厚みなどの特殊な形態を把握することができ、より安全にインプラント治療を提供することが可能となります。
現在のインプラント療法ではインプラント体を歯槽骨がわずかしかない位置に埋入しなければならない場合がかなり多くあります。その際、歯槽堤増大術を併用していくことが多いです。これらの手術の成功、インプラントの長期経過を可能とするには、患者の行動(口腔清掃と治療理解度)、患者のリスクファクター(喫煙、クレンチング、ブラキシズム)、および歯周組織の微生物などによって決まります。またもっとも重要なことは天然歯と同様に勤勉で丁寧なプラークコントロールと専門的なメインテナンス治療(リコール)が、良好な長期予後のために必要であるということです。


<リコール>
インプラントの初期の失敗は、純粋に生物学的理由に起因することが多いです。つまりインプラント埋入時に骨を過熱することにより埋入窩の壊死と汚染を生じ、続いて感染を引き起こす可能性があります。質的あるいは量的に不十分な骨、初期安定性の不足、早期に負荷を加えることはオッセオインテグレーションの妨げとなります。
一方、後期の失敗は健康な患者では通常、機械的なもの(過負荷やパラファンクション)、あるいは技術的なもの(インプラント体の破折)です。
インプラント周囲の問題はできるだけ早期に診断する必要があり、病変の進行を食い止めるためにはリコールの間隔と病気のタイプを評価する必要があります。以下にその評価内容を記します。
・インプラント構造物へのプラークの付着増加
・インプラント周囲組織のプロービング時出血
・排膿、初期のポケット形成
・ポケットプロービングデプス
・インプラント周囲の骨欠損(X線写真)
以上の点を評価し、リコール時のメインテナンスでの処置を決定していきます。
口腔清掃はインプラント表面を傷つけない道具を用いた定期的なプロフェッショナルケアが必須です。また日常のケアによって、インプラントは高齢になるまでメインテナンスすることができます。

当院では歯槽堤の増大およびインプラント治療を多く提供していますので今回の勉強内容を各スタッフで共有し知識の整理を図りました。

参考文献:永末 摩美(2008)「ラタイチャーク カラーアトラス 歯周病学 第3版」p504-514 永末書店

日本歯周病学会認定研修施設 医療法人社団 幸誠会 たぼ歯科医院

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