スケーリングとルートプレーニングのための手用器具
今週も抄読会の内容について、院内ホームページで抄読会の内容の一部を掲載させて頂きます。
皆様の歯周病に関する知識の向上に役立てていただければと思います。
vol.21スケーリングとルートプレーニングのための手用器具
歯肉縁下の大きな歯石の除去には、音波と超音波器具に加えてキュレットが用いられます。ルートプレーニングと軟組織キュレッタージにはキュレットを用います。
多くのメーカーが数多くの手用器具を提供していて、品質材料とデザインにも種々なものがあります。
もっとも重要なことは、キュレットの刃が根面と適切な角度(約80度)をなし、すべての根面に効果的にアプローチできるキュレットが、セットとして揃っていることです。キュレットは毎回使用前にシャープニングする必要があります。
両刃式のユニバーサルタイプと片刃式のグレイシータイプとの差異を理解しておくことは重要です。グレイシー型キュレットは主にデブライドメントとルートプレーニングに用いられ、軟組織キュレッタージにはあまり用いられません。
グレイシー型キュレット
歯肉弁を剥離しない非外科的 (“直視しない")な歯肉縁下のスケーリングおよびルートプレーニングには、多くの種々な根面形態に適応できる特殊な器具が使用されます。1930年代、歯科医師のDr. C. H. Graceyは器具メーカーのHugo Friedman (Hu-Friedy !) とともに、非常に深くて到達しにくい歯周ポケットにも歯肉に外傷を与えずにすべての歯科医師が治療できるようなキュレットのセットを考案しました。さらにこれらのキュレットは、全ての歯肉縁下歯石の完全な除去とすべての根面の完全な清掃やプレーニングを可能にし、治療後の軟組織の適合と再付着を高めます。これらのキュレットに多くの改良が加えられ、最終的に今日のグレイシー型キュレットに至りました。
グレイシー型キュレット
(Hu-Friedyオリジナル)
GRA 1/2 黄色
GRA 3/4 オレンジ色
GRA 5/6 赤色
GRA 7/8 赤紫色
GRA 9/10 紫色
GRA 11/12 青紫色
GRA 13/14 青色
グレイシー1/2-
切歯、犬歯
主な使用部位は切歯と犬歯の唇側根面である。
GRA1/2
シャンクの長さは中程度で、湾曲は緩やか。
グレイシー3/4
切歯、犬歯
主な使用部位はGRA1/2と同じだが、3/4はシャンクの湾曲が強いので口蓋側根面や舌側根面にとくに適している。
GRA3/4
シャンクは短めで、湾曲が強い。
これらの器具の刃は、作業端の凸湾曲に沿った“外側”の面である。
グレイシー5/6
前歯、小臼歯
このキュレットの使用部位は、前歯部のユニバーサルキュレットの使用部位とほぼ一致します。長く直線的なシャンクを持ったこのキュレットは深いポケットが存在するほぼすべての部位で使用できます。
前歯部唇側
遠心唇側面のスケーリング
患者の頭部:水平位,頭を右に傾ける
術者の位置:9時付近
レストの位置(支点):口腔内、左手親指の上に置く間接レスト
視野:直視
口蓋側面のスケーリング
患者の頭部:右後方に傾ける
術者の位置:11時付近
レストの位置:口腔内に置く直接レスト
視野:間接視(ミラー使用)
口蓋側から歯間部に向けて平行に3~4mmのストローク
グレイシー7/8
臼歯部-頬側
頬側面のスケーリング
患者の頭部:術者側にわずかに傾ける
術者の位置:10時付近
レストの位置:口腔内,隣在歯に直接レスト
視野:直視
臼歯部-口蓋側
口蓋側面のスケーリング
患者の頭部:術者と逆方向の左に傾ける
術者の位置:8時付近
レストの位置:口腔内,咬合面に直接レストを置く。
視野:直視
グレイシー11/12
臼歯部一近心面
頬側から近心面のスケーリング
患者の頭部:右に若干傾ける
術者の位置:10時付近
レストの位置:口腔内,隣在歯に直接レスト
視野:直視
臼歯部-近心
口蓋側から近心面のスケーリング
患者の頭部:左後方に傾ける
術者の位置:8時付近
レストの位置:下顎に口腔外レスト、または対合歯列に口腔内レスト
左手親指で誘導
視野:直視
グレイシー13/14
大臼歯、小臼歯一遠心
臼歯部一遠心
頬側から遠心面のスケーリング
患者の頭部:右に大きく傾ける
術者の位置:10時付近
レストの位置:口腔内,隣在歯に直接レスト
視野:直視,デンタルミラーで頬粘膜を排除
臼歯部一遠心
頬側から遠心面のスケーリング
患者の頭部:右に大きく傾ける
術者の位置:10時付近
レストの位置:口腔内、隣在歯に直接レスト
視野:直視、デンタルミラーで頬粘膜を排除
器具のシャープニング
キュレットは、非外科的および外科的歯周療法の双方に用いられる普遍的な器具です。キュレットは、スケーリング、歯
肉縁下のデブライドメント、ルートプレーニング、歯肉組織の掻爬に使用されます。
したがって、キュレットの特徴を知り機能を維持することは、きわめて重要です。鈍化した器具は、再びシャープニングする必要があります。どれほどの術者の器用さや力をもってしても、鈍った器具の不利は補えないです。鈍化した器具は“かみ込み(bite)”がなく、歯石は除去されずに磨かれ(バーニッシュ)てしまいます。
キュレットの研磨は、患者の治療前・治療中・治療後に行って良い、とくに小さくて細いキュレットは、スケーリングの最中にエナメル質や金属補綴物との接触により、すぐに鈍化します。
このような器具は、消毒した低磨耗性の砥石を使って、治療中に再度シャープニングする必要があります。10~15回シャープニングしたキュレットは薄くなり、破折の可能性があるので、交換しなければならないです。
ユニバーサル型キュレットとグレイシー型キュレット
の相違点
1 作業端の内面は、シャンクに対して90度(ユニバーサル)、あるいは70度(グレイシー)の角度をしている。
2 ユニバーサル型キュレットは作業端の両側の刃縁がシャープニングされているが、グレイシー型キュレットは片側(低い側)の刃のみシャープニングされている。
3 グレイシー型キュレットは、作業端が内面と刃部にわたって弓状になっている.
参考文献:永末 摩美(2008)「ラタイチャーク カラーアトラス 歯周病学 第3版」P261-P273 永末書店