歯磨剤について
当院では日本歯周病学会認定研修施設として常勤歯科医師、衛生士の歯周病に関する専門的な知識の習得を目標に1週間に1度、朝に抄読会を行なっています。
抄読会を通して歯周病に関する文献、論文を読み合わせをすることでスタッフ間で歯周病についての共通の知識をもち、医院として患者様により専門的で高度な歯周病治療を提供していきたいと考えています。
今後は抄読会の内容について、院内ホームページで抄読会の内容の一部を掲載させて頂きます。
皆様の歯周病に関する知識の向上に役立てていただければと思います。
Vol 19
歯磨剤について
歯磨剤は、口腔清掃をより強化する日常のホームケアの不可欠な要素です。歯磨剤は機械的なプラーク除去の効率を事実上2倍にし、う蝕や歯肉の炎症などの口腔内疾患予防に役立ちます。
どのような歯磨剤でも最も重要な成分は研磨剤です。メーカーは多くの種類の研磨剤を使用しており、化学組成(リン酸塩、炭酸塩、シリカ、アルミナなど)だけでなく、粒子の大きさや形についても様々なものがあります。
歯磨剤の非機械的成分として化学成分があります。これらの成分は、う蝕を防止し(フッ化物)、露出した象牙質の知覚過敏を鈍麻させ(カリウム塩およびストロンチウム塩;フッ化物)、消毒作用を持ち(トリクロサン)、着色歯を漂白します。
化学的プラークコントロール
過度なブラッシングは歯肉を傷つけ、歯質に損傷を与えます。理想的な口腔清掃は、一部の抗菌剤の補助的な使用によってのみ達成され、、これらの抗菌剤は歯磨剤や洗口剤に成分として含まれる可能性があります。治療に用いる「ソフト化学療法」の物質は、プラークを少なくとも80%減少させる必要があります。今日までこの水準の効果が達成されたのはビスビグアニド系のクロルヘキシジンのみです。
口臭のための口腔清掃
全てひとの約半数が散発性あるいは永続性の口臭に悩んでいると推定されています。病的口臭は多くの多様な揮発性物質と関連しており、全身・鼻咽腔・口腔の様々な因子が原因である可能性があります。
口臭を減らす最も重要なステップは、口腔清掃の改善、特に舌の清掃であると考えられます。そのために舌スクレイパーや舌ブラシといった補助用具があります。
口腔清掃の可能性、成功と限界
口腔清掃と予防
効果的な機械的口腔清掃が最善の歯周病予防であることに、もはやいかなる疑いもありません。機械的口腔清掃は化学療法剤の短期間使用により最適にすることができます。最適な口腔清掃により口腔内の健康は維持されます(一次予防)。
口腔清掃と歯肉炎
最適な歯肉縁上のプラークコントロールは純粋な予防を超えて効果的な歯肉炎療法でもあります。これにはプロフェッショナルツースクリーニングは一定の間隔で必ず行わなければなりません。
口腔清掃と歯周炎
歯周炎の治療に口腔清掃のみを行なった場合にはその効果は比較的少ないです。十分に動機付けされ手先が器用な患者であっても、口腔清掃には明らかな限界が存在します。
歯周治療後の口腔清掃
患者自身による最適なプラークコントロールが歯科医師や歯科衛生士によりリコール時に強化されることで、初めて疾患の再発や不活性残存ポケットの再感染を防ぐことができます。
歯肉縁上の歯面清掃
全てのステイン、沈着物、歯石の除去は、基本治療第1期です。これは健康な歯周組織の重要な予防処置でもあり、歯周炎の治療終了後の最も重要な術後処置でもあります。そのため毎回のリコール時に徹底した歯面清掃を行います。
歯石はプラークを付着堆積させる優れた基質であり、完全に除去しなくてはなりません。最も正確なのは手用器具になりますが、ほかにも超音波スケーラーおよびエアスケーラーを用いたりもします。
小臼歯部・大臼歯部や歯冠部の溝・陥凹部など器具が到達しにくい部位、露出コン面ではスケーラーやキュレットを併用します。
医原性刺激源の除去
機械的なプラークおよび歯石の除去と同時に、全ての不良歯冠修復物を修正して歯肉縁上・縁下の歯面を滑沢にし、天然歯の紙面と歯冠修復物とクラウンマージン移行部を滑らかにします。これにより初めて患者が効率的なプラークコントロールを持続できるようになります。
重要なのは刺激物の直接的な刺激よりも、わずかな修復物の不良でもプラークが付着しやすい場所になってしまうということです。オーバーハングや亀裂のある古い修復物は、修復物の下に二次う蝕が存在することが多いので、除去して再修復すべきです。
参考文献:永末 摩美(2008)「ラタイチャーク カラーアトラス 歯周病学 第3版」 p235―247 永末書店
日本歯周病学会認定研修施設 医療法人社団 幸誠会 たぼ歯科医院