歯槽堤の欠損Vol.2
当院では日本歯周病学会認定研修施設として常勤歯科医師、衛生士の歯周病に関する専門的な知識の習得を目標に1週間に1度、朝に抄読会を行なっています。
抄読会を通して歯周病に関する文献、論文を読み合わせをすることでスタッフ間で歯周病についての共通の知識をもち、医院として患者様により専門的で高度な歯周病治療を提供していきたいと考えています。
今後は抄読会の内容について、院内ホームページで抄読会の内容の一部を掲載させて頂きます。
皆様の歯周病に関する知識の向上に役立てていただければと思います。
本日は歯槽堤の欠損、つまり歯を抜いた後あるいは何らかの原因で歯を失った後どのようなアプローチを選択したらいいかについて勉強しました。その内容について以下に記します。
Vol 15
細菌の分子生物学的検査
DNAプローブハイブリダイゼーション
細菌、種特異性で通常は放射性物質で標識されたオリゴヌクレオチド配列を含み、相補的な細菌のDNAやRNA配列に結合する検査が市販されるようになってきました。これらの検査は、生きた細菌を必要としないため、専門的な研究室へ移送することは問題ありません。
ハイブリダイゼーションテクニックとはDNAまたはRNAの二重らせん構造を分離した後、個々のらせん構造は断片化され幕に転写されます。標識された遺伝子プローブは、ターゲットDNAの相補的な断片を見つけてハイブリダイゼーションします。
IAIパドテスト
市販されているDNAまたはRNA検査は、歯周病にもっとも関連しているマーカー細菌の3〜8菌種の検査判定ができます。RNA検査であるIAIパドテスト4.5を使用すると以下の4つの歯周病原性細菌について、部位特異的なプローブあるいは口腔内全体から集めたプローブで検査することができます。
・Aa/Actinobacillus actinomycetemcomitans
・Tf/Tannerella forsythensis
・Pg/Porphyromonas gingivolis
・Td/Treponema denticola
免疫学的検査―抗原抗体反応
免疫学的に細菌を特定する方法は特定の抗原(Ag)、表面マーカーを用いることで、それが特異モノクローナル抗体と結合することで特定できます。抗原と抗体の結合を視覚化するためにレポーターモレキュラーと呼ばれるものが付加された特別に準備された抗体を用います。これは発光するような酵素や蛍光物質用いることによって行うことができます。
抗原抗体反応は免疫蛍光法を用いて、蛍光顕微鏡を利用して視ることができます。この方法では死んだ細菌も生きた細菌も観察でき、新しい手法では色にもとづいて細菌の生死を鑑別することも可能となっています。
酵素細菌検査―BANAテスト
ある種の歯周病原細菌は代謝中にトリプシン様酵素、ペプチダーゼを産生し、BANAを分解する能力を持っています。BANAとはN-α-ベンゾイル-DL-アルギニン-2-ナフチルアミドのことであり、細菌性ペプチダーゼによって加水分解される合成基質です。
BANAテストで強陽性の場合は機械的なポケット治療に食われて偏性嫌気性菌に対する抗生物質を用いるべきです。
宿主反応の検査
これまで述べた検査は、すべて臨床的パラメーターおよび直接的あるいは間接的に歯周病原細菌を特定することに基づいています。一方ハウペリオモニターやペリオテンプシステムといったものは微生物の感染に対する宿主反応を検査対象としています。
多くの指標が歯周組織の破壊が進行していることを示しており、その中にはPMNの欠如、歯周病原細菌に対する高い抗体価、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼなどの酵素、炎症性メディエーターの上昇が含まれています。さらに歯肉縁下の温度を測定することで炎症の存在を知ることができます。しかし必ずしも疾患の進行についての情報を提供するものではありません。現在宿主応答をテストする方法はいずれもまだ実際に日常的に利用されてはいません。
遺伝的リスク〜IL-1遺伝子多形性に対する検査
炎症反応が多数のメッセンジャー物質およびプロスタグランジン、メタロプロティナーゼなどの酵素、およびある種のサイトカインによって制御されていることが実証されています。これらのサイトカインの1つは、もっとも強力で一般的な活性化因子の1つ:インターロイキン(IL-1)です。
IL-陽性型遺伝子に関係する歯周組織の炎症に対する感受性の高まりは、喫煙や口腔清掃不良、糖尿病のような全身疾患などのリスクファクターがさらに加わらない限り、若い人に直ちに現れることはありません。しかしリスクが長期間存在する場合にはIL-1多形性は歯周炎を急速に重症化させます。
リスクファクターとしての口腔清掃不良-プロービング時の出血(BOP)
プラーク指数は口腔清掃の効果と患者の協力度を示すものですが、感染性炎症に対する宿主反応については何も示していません。これらの個人ごとに異なる反応は歯周炎の重症度を最終的に決める基準であり、BOP指数を用いて確かめることができます。時間が経過した後(リコール)の測定で、同じ部位に出血がないことは病変の進行がない安定した状態であることを示しています。
参考文献:永末 摩美(2008)「ラタイチャーク カラーアトラス 歯周病学 第3版」 p183―195 永末書店
日本歯周病学会認定研修施設 医療法人社団 幸誠会 たぼ歯科医院