歯槽堤の欠損
当院では日本歯周病学会認定研修施設として常勤歯科医師、衛生士の歯周病に関する専門的な知識の習得を目標に1週間に1度、朝に抄読会を行なっています。
抄読会を通して歯周病に関する文献、論文を読み合わせをすることでスタッフ間で歯周病についての共通の知識をもち、医院として患者様により専門的で高度な歯周病治療を提供していきたいと考えています。
今後は抄読会の内容について、院内ホームページで抄読会の内容の一部を掲載させて頂きます。
皆様の歯周病に関する知識の向上に役立てていただければと思います。
本日は歯槽堤の欠損、つまり歯を抜いた後あるいは何らかの原因で歯を失った後どのようなアプローチを選択したらいいかについて勉強しました。その内容について以下に記します。
Vol 11
ヘルペス性歯肉口内炎
ヘルペス性歯肉口内炎はウイルス感染症で、小児や20~25歳の若年成人に最も多くみられます。一次感染すると必ず発熱し、疼痛を伴うリンパ節の腫脹がみられます。口腔内では疼痛を伴う急性歯肉炎、水疱性アフタ、付着歯肉のびらん性病変が認められます。ときには口腔粘膜や口唇にも現れます。
誘因には機械的刺激、日光浴、不摂生な食事、ホルモン異常、および精神的ストレスが挙げられます。病変は通常治療を行わなくとも1~2週間で自然に消退します。
治療法は細菌重感染を予防するために通常は軟膏局所塗布による対症療法を行いますが、全身および局所用にアシクロビルを処方します。
全身疾患と関連する歯周炎〜タイプ1糖尿病とタイプ2糖尿病〜
糖尿病と歯肉炎/歯周炎の関係は、コントロールされていない糖尿病またはコントロール不良の糖尿病と歯肉炎/歯周炎が関係しています。
リスクファクターとなる理由は、一つは糖尿病患者に通常観察される多形核顆粒球(PMN)の機能低下です。さらに高血糖によってAGE(糖化最終産物)が増加し、マクロファージが受容体を刺激してTNF-α、IL -1βおよびIL -6の合成を促進します。
ダウン症候群(トリソミー21)
この疾患の特徴は染色体異常です。生殖細胞が分裂する過程である減数分裂時に21番目染色体が分裂しません。そのため21番の位置に3本の染色体が存在することになります。
ダウン症候群の新生児が出生する確率は約700人に1人です。
ダウン症候群の特徴としては
溝状舌、つり上がった目、頭が小さい、ずんぐりとした体格、短く柔らかい手、心奇形です。
口腔内環境は介護者に頼ることとなるので定期的なリコールが必要となってきます。
Papillon-Lefevre(パピヨン・ルフェーベル)症候群
まれな常染色体劣性遺伝の皮膚疾患です。主症状は重度の歯周炎、手掌と足底の過角化症です。乳歯は多くの症例で萌出が完了する前に脱落します。永久歯はすべての症例で歯周病に罹患しています。
治療法としては短期間でのリコールで、保存不可能な歯の抜歯、機械的なデブライドメント、局所薬物治療、および全身薬物治療を行います。思春期を過ぎて保存できる歯は長期にわたって保存することができる可能性があります。
HIV感染〜エイズ〜
免疫不全症(エイズ)(後天性免疫不全症候群)は、レトロウイルスであるヒト免疫不全ウイルス1型が原因で発症します。
HIV疾患は今でも世界的に増加中です。2002年末の時点でHIV
の感染者数は4100万人でした。サハラ砂漠以南のアフリカ諸国やロシアでは増加しています。現在、HIVに感染している成人の2/3がサハラ砂漠以南のアフリカ諸国やロシアに居住しており小児の場合は90%に上ります。
HIV疾患は感染してからの進行が極めて早いです。何10億ものHIV粒子が何百万ものCD4リンパ球を破壊します。HIウイルスと宿主細胞の熾烈な消耗戦が何年も続きます。この疾患の進行中、感染して平均約6ヶ月後には自由に循環していたウイルスの数は劇的に減り、免疫細胞の数が再び増加します。攻撃と防御のバランスが約10年間保たれ、再びウイルスの数が劇的に増加し、宿主の防御が破壊されます。
現在の抗レトロウイルス剤併用療法を用いて、ウイルス粒子の数を検出レベル以下に保つことができます。
HIV疾患の口腔症状
口腔の病変は疼痛を伴うことが多く、患者のクオリティ・オブ・ライフを脅かします。口腔症状の発現時期はCD4細胞数とウイルス量により決まります。しかし、ときによって口腔の病変、とくに線状歯肉紅斑(LGE)と壊死性潰瘍性歯周炎(NUP)が、HIV疾患の過程の予測不可能な時期に発現します。
線状歯肉紅斑(LGE)は単純なプラーク由来の歯肉炎とは明らかに異なっています。LGEは辺縁歯肉の境界明瞭な赤色の帯を特徴とします。
治療はベターダインを用いた機械的清掃、口腔清掃をよくするためのモチベーション、さらに重症の場合にはクロルヘキシジンによる洗浄です。
参考文献:永末 摩美(2008)「ラタイチャーク カラーアトラス 歯周病学 第3版」 p131―143 永末書店
日本歯周病学会認定研修施設 医療法人社団 幸誠会 たぼ歯科医院