歯周病の標準的な治療法について

歯周病の標準的な治療法について

重度な歯周炎の症例では、すべての歯を保存するのは困難な場合が多い。治療計画の段階で、保存不可能な歯を判定し、抜歯する必要があるがそれはこれらの歯は細菌の貯留場所となっているからである。このような歯は、ほかの歯への細菌の再付着を促進する。

歯周基本治療の段階、または遅くても外科手術中にさらに他の歯を抜歯する必要があるかどうかを決定する必要がある。アタッチメントロスの程度に加えて、次に示す因子が抜歯を決定する過程で1つの役割を演じる。

・喪失した歯を補綴する必要があるか?

・小臼歯の咬合は満足できる状態か?

・喪失した歯はすべて絶対に補綴する必要があるか?(例えば、喪失した第1大臼歯と安定した咬合は?)

・その歯が歯科的再構築を行う戦略的支台としてどれぐらい重要か?

・重大な歯内療法の問題はあるか?

・家系的または遺伝的なリスクファクターはあるか?

・歯列全体の予後はどうか?

重要なことは、総合的なオーラルリコンストラックション(口腔の再構築)を行うよりもメインテナンスを最良に行うこと、および咀嚼機能、構音機能、審美性を再建することである。簡潔に言うと、患者各人が口腔、歯に満足感を持つことが重要である。

標準的な方法では次のテーマについて述べる

・暫間補綴--可撤式か固定式か

・長期間使用の暫間補綴としての接着性ブリッジ

・固定式暫間補綴一問題が生じる部位

・固定式暫間レジン補綴一症例

・金属で補強した固定式の長期使用暫間補綴一症例

・最終的な固定式補綴-全顎のブリッジ補綴

・大臼歯の喪失

・少数残存歯を用いたテレスコープ補綴

・金属床になる補綴-社会的解決策

暫間補綴-可撤式か固定式か?

歯が欠損しているとき、あるいは歯周治療中に予後不良の歯を抜かざるを得なかったとき、歯を失った部分に機能的あるいは審美的な理由から治療中に暫間補綴物を作製する必要があることが多い。

このタイプの暫間補綴物は歯周組織に対し親和性のあるものでなくてはならない。暫間補綴物は歯周組織の治癒過程に悪影響を及ぼしてはならず、残存する隣在歯に外傷を起こさせてはならない。

可撤式と固定式の暫間補綴物はかなり異なるが、なるべく固定式を選択すべきである。これらの暫間補綴物は、時には長期間(数週間や数ヶ月)装着していることがある。この期間中に、治療を行なって保存している歯の歯周組織の治癒と動揺の減少が起き、最終補綴物の支台歯となりうるかどうかを決定することができる。

包括的な歯周治療の後、歯周組織の成熟期間中に、歯肉辺縁の形態的変化がしばしば生じる。これは,固定式ブリッジやテレスコープによる補綴治療の支台となる歯の形成を行うにあたって、 きわめて重要な意義がある(クラウンのマージンの歯肉縁上,縁下の位置,審美性)

次に症例と症例が含んでいる問題点を提示する:

・可撤式の即時暫間補綴物

・下顎の接着性ブリッジ-“長期間暫間的に使用,

・固定式暫間補綴-問題のある部位

・固定式のレジン被覆冠

下顎の接着性ブリッジ-長期間使用の暫間補綴物について

下顎の前歯には、原因不明の重度な不規則なアタッチメントロスが生じることがある。そのため下顎前歯1本が喪失することが多く、隣接歯は歯周治療が可能である。
今日このような状態の臨床的な治療には、シングルスタンドのインプラントを用いることも可能であるが、スペース的な条件が適している場合に限られる (歯槽堤の幅, “隣接歯” との距離)より単純な選択は接着性ブリッジである。
古典的なブリッジ修復を回避し、隣接歯の硬組織を傷付けることはない。さらに接着性ブリッジはかなり短期間に製作することができ、そのため患者にとって経済的である。

固定式暫間補綴-問題が生じる部位について

・歯肉辺縁ークラウンマージン
・歯間空隙-歯間乳頭
・ポンティック-リッジラップ
・咬合-咬合面

歯周治療を進める間に保存不能な歯を抜歯したり、すでに歯が喪失してしまっている場合には、ほとんどの症例で暫間補綴物を用う。ただし大臼歯の抜歯は例外となりうる。
暫間補綴物を歯周治療の間ずっと使用していなければならない場合は、暫間補綴物は、機能的、審美的理由から、歯周治療の積極的な処置が完了した後新しい形態に良く適応するように修正する必要がある。さもなければ暫間補綴物を完全に作り替える必要がある。
最終的に固定式のブリッジを計画する場合には、必ず固定式の暫間補綴物を使用するのが大切なことである。 この場合の暫間ブリッジは、生物学的にも審美的にもきわめて高い要求に適応できなければならない。技工所での製作という制限の中で、暫間ブリッジは最終ブリッジを予想する必要がある。すなわちとくに、咬合、形態、色調、支台歯とポンティックの長さおよび歯間部の形態についてである。

 

暫間補綴物は、歯周治療後の長期間の治癒を防げたり、抑制したりしないということも重要である。

暫間補綴物のクラウンマージンは正確でしかも歯肉縁上でなければならない。歯周治療の後、数ヶ月にもわたって形態は変化する可能性がある。治療した支台歯周辺の歯肉辺縁は根尖方向に退縮するか、あるいはまれに歯冠方向に移動する可能性がある (“クリーピングアタッチメント”、すなわち歯冠長延長手術後)。

抜歯した部位には骨吸収が起こる可能性がある。暫間補綴物を装着している間に、支台歯の周囲の歯肉辺縁および歯が欠損している部分の歯槽堤との臨床的な形態の不調和を観察し、必要な修正を行うことができる:

・歯冠が著しく短い歯は,多くの症例で歯冠を長くする必要がある(歯肉切除術あるいは骨切除術を伴うフラップ手術).
・歯冠が著しく長い歯は、補綴による再構築期や局所的な歯冠形態修正により短くすることができる。
・抜歯した部位に著しい組織の萎縮があれば、歯槽堤増大術を行うことも考えられる。

組織変化の大きさや広がりが正確に予測できないため、固定式の暫間補綴物はできるだけ長期間(数ヶ月)使用する必要があり、時を経て必要に応じて調整する必要がある。
暫間ブリッジは最終ブリッジにできる限り似ている必要がある。暫間補綴物と最終補綴物の違いは、使用する材料の違いに付け加えてクラウンマージンの位置である。マージンの位置は他人から見える部位ではわずかに歯肉縁下に入れ、臼歯部では歯肉縁上にする.。さらに違いがある可能性があるのは、ポンティックの形態と歯槽堤との接触状態である。

すべての暫間ブリッジの構造とデザインは、口腔と歯の清掃ができるだけ良く行えるようにする必要がある。これは暫間補綴物の解剖学的・形態学的構造と同じく重要な要素である。
(1)歯ブラシは平滑面および頬舌側の歯頸部には効果的である。
(2)らせん状の歯間ブラシは臼歯部の広い歯間部に効果がある。
(3) “スーパーフロス”は支台歯間の清掃および審美的に重要な上顎前歯部のポンティック底部の清掃にとくに効果的である。

暫間ブリッジの必要条件について

・支台歯の安定と補綴した歯の機能
・象牙質と歯髄の保護
・歯肉の形態付与-“エマージェンスプロファイル”
・口腔清掃の可能性、とくに歯間部
・患者に対する動機付け
・最終的なブリッジのテンプレート

金属で補強した固定式の長期使用暫間補綴ついて

重度に進行した症例で歯周病の予後が予測できない場合や患者が保存不能な歯も保存したいと望む場合には、安定した長期間使用の暫間補綴物を用いる。暫間補綴物の使用は、治療期間中に動揺の強い歯を固定するのに有用であり、口腔清掃を良好にすることを可能にし、最終的な治療計画をたてるまでの時
間的猶予を与える。
金属で補強された長期使用暫間ブリッジは、技工所で製作され、症例によっては数年間用いることもあり“最終暫間補綴物” ともいわれる。

 

最終的な固定式補綴-全顎のブリッジ補綴について

長期間の暫間補綴物から最終補綴物への移行期間は、必ずしもはっきりしているわけではない。口腔内の状態,診断と予後のみならず、治療計画に対する患者自身の希望,人種や個人的要望、経済的事情は、きわめて重要である。長期間の暫間補綴物と、単純な可撤性の補綴物による治療と、複雑で高価な固定性の補綴物による治療は区別しなくてはならない。

大臼歯の喪失-今何を行うか?

最後方大臼歯が欠損している場合(通常補綴を行わない智歯を除いて)、大臼歯の補綴を行うか否かの議論の前に歯列全体の状況を考えることが最初に必要である。

以下の事項が決定要素である:
・全歯列の機能状況
・他の部位の残存歯,とくに対合歯部の状況
・咀嚼機能や快適さに対する患者の要求
・患者の治療に対する協力度(口腔清掃)
・小臼歯部までの咬合(大臼歯は補綴しない)
・遊離端欠損の部分床義歯
・インプラント
・延長ブリッジ

少数残存歯を用いたテレスコープ補綴について

重度歯周炎の包括的治療を行った後、数本の支台歯しか残っていない症例がしばしばある。このような症例では、固定性のブリッジ、延長ブリッジ、インプラントの代わりにテレスコープの補綴物(コーピング)を用いることができる。上部構造は可撤式のため、残存する支台歯の清掃は容易であり、歯槽堤に残存する陥凹部は補綴的に対応することが可能である。
残存する支台の数によって、上部構造はブリッジタイプや有床義歯タイプさらにはパラタルバーを組み込んだ装置にする。

部分床義歯による補綴

多くの症例ですべての人々に何でもできる歯科健康保険がないことから古いタイプの金属鋳造可撤式部分床義歯が治療の選択となる可能性がある。Bergmannら(1982)によると、 このタイプの部分床義歯は,包括的な歯周治療を行った患者では10年間は持つ可能性がある。

利点
・低コスト
・作製期間が短い
・レジンを用いて以後の修正が最大限に可能(歯肉,乳頭,顎堤欠損部)
・歯間離開の改善や維持
・その後に包括的な再建治療が可能(固定性ブリッジ、インプラントなど)
・補綴物と残存歯の口腔清掃が容易

欠点
・鉤歯に外傷が生じる
・理想的な精度は得られない
・う蝕リスクが上昇する
・精神的な問題 (取り外すものが入っている)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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